000:庭


母を亡くし、残された父と独身の娘が、母の手入れしていた庭をめぐって肉親の死を徐々に受け入れていく。母が生前守って来た家に、仕事ばかりしていた父と娘がともに居る、その家は母が好きだった少女趣味でかざられている、その風景だけでもう泣ける。

僕は、何かの失われた役割を、のこされた人間たちがなんとか埋め合わせようとする話が大好きだ。たいていは、非常にいびつなかたちで埋め合わされることになる。この小説では父の滑稽なほどそつのない炊事洗濯と、母のかわりのイギリス旅行がそれにあたる。このガーデニング講座の旅行で記念撮影された写真が、最高にいびつだった。