000: 小さな橋で
江戸時代なのだろうか。こうじは近所の子供をたばねている、仕切っている近所の原っぱをよその町の子供から守るために喧嘩したりと立派なガキ大将なのだが、家に帰ると子供ではいられない。父に失踪され、水商売で稼ぐ母と、妻子のある男と交際している姉とともに暮らしていて、まだ10歳なのに大人びてしまうからだ。
色恋に振り回される母と姉に苦しめられながら鬱憤をため込んでいるとき、失踪した父親が現れ、お金を渡す。その金をくすね、町外れの小さな橋を越えて家から逃げようとするこうじだったが、遊び仲間の少女、およしに抱きとめられて町にとどまる。
子供なのにいつでも家族のために奔走しているこうじが、色恋を嫌悪し、グレかかったところで恋を知って僅かに救われるラストまで全く淀みがなかったが、淀みがなさすぎるとも思った。
博打にハマり、金を盗んだうえ家族を捨てて逃げた父がなぜこんなにもサラサラ書かれているのか。父がこうじに金を託す場面は悪魔からの誘いであったかもしれない、いわばこうじがこうなったのは父が元凶なのだから、父とこうじの再会の場面にはもっと毒や忌々しさがあってもよかったのではないか。
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